公開日:2025.01.23 更新日:2025.02.12
いつもご覧いただき誠にありがとうございます。
ソラノデザインの角田です。
今回はソラノデザインのtoC自社事業を例に取り、
toC事業の拡大戦略についてCPOや指名検索の観点からソラノデザイン流の考え方を記載していきます。
同じようにtoC事業に携わるかた、toC向けのマーケティングを検討されている顧客様にとって有益なコラムになれば良いなと思っています。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
目次
このコラムの大前提
まず大前提として、「プロダクトの成功」の定義をどこに置くかですが、
弊社がやっているような「toC向けのインテリア商材通販サイト」などの場合は、
どういう定義を「プロダクトの成功」とすれば良いのでしょう?
結論から言いますと、マクロで見た時のKPIは「指名検索数」になると考えています。
つまりブランド名を指名で検索してくれるような、
カスタマーの脳内にブランド名が自然と第一想起されている状態です。
toB事業を例に出すともっとわかりやすくなります。
WEBのことは角田くんに相談しよう、
と、私の電話番号をクリックしてくださる顧客様は、ありがたいことに多いです。
WEBのことならとりあえず、角田くんに聞いておくか、と、
第一想起が取れているという事ですよね。
つまり弊社toB事業で言うところの「お客様が私に電話をクリックする数」が、
toCで言うところの「指名検索」になります。
この状態をtoCで担保していく、つまり指名検索数を増やしていきます。
また、toCであれtoBであれ、
Googleや各種SNSなどでインプレッションを上げるのは、
あくまで認知を上げるために使うのが理想だと考えています。
と言いますのも、
この頃はCPOが合わない商材が多いこと、
また、プラットフォームの変化、例えばGoogleやインスタグラムのアルゴリズムが変動した際の事業への打撃を考えると、
「指名検索でブランドにファンがついている状態」こそが「事業の安定 = 成功」と定義する方が、
より健全だという考えの基です。
最後にもう一つ前提として、今回CPOという言葉と、ROIという言葉がたくさん出てくるコラムになります。
CPOは一つの注文を獲得するのに必要になってくる費用のことを指し、
ROIは投資対効果を投資した費用と回収した利益で換算しパーセンテージ化したものです。
それでは進めていきます。
ROIとCPOを正しく捉えること
まずはCPOです。
一端のマーケティング担当者なら当たり前の手法といえば手法ですが、
まずは上限CPOを決めるところから、CPO周りの施策はスタートします。
上限CPOを決める際に業界の平均CPOなども調べると思うのですが、
この頃広告のCPC(クリック単価)の高騰で、
そもそも商材的にCPOが合わないという業態も多いです。
多いと言いますか、この頃のtoC市場で頭ひとつ突き抜けるためには、
基本的に広告のCPOは採算が合いづらい時代と考えた方が良いでしょう。
簡単に言い直しますと、
広告費1万円投資で、1注文取れますよ、でも1注文あたりの平均利益は3000円ですよ、
と言う場合。
単純計算で1注文を「広告のみ」で獲得すると赤字が7000円でる計算です。
これだとビジネスとして成り立ちません。
反面、CPOが安いとかなり財務的に余裕が出ます。
YouTubeで異常に認知をとれているからCPAが安い!
SEOで上位表示が担保されているからCPAが安い!
など、お金持ちは「CPA」か「原価」が異常値を出していることが多いです。
この「異常値」をどう出すかのゲームなんですね。
ただ、いくらCPOが合わない商材や時代であれ、
その中でも広告で戦う必要が出てくるフェーズがあります。
それは「認知拡大」を必要としているフェーズです。
察しの良い方は「でも待って。大手も上場企業もバンバン広告売ってるじゃん」と思われるかもしれません。
しかしその場合でも、「顧客の幅を広げるために認知を広げたがっていて投資している」ケースや、
「そもそも大手なので原価が安く利益率が高く、広告のROI(投資利益率)がちゃんと担保されている」場合がほとんど。
もしくはお金が余りすぎてるので余裕で広告にお金を流せる、などでしょうか。
いわゆる「強者の戦略」でして、
私たち中小企業が取れる「弱者の戦略」とは違います。
我々中小企業が広告を打つ場合は、
- ROIを正しく計算する
- 上限CPOを決める
- CPOがそもそも業態的に合わない場合「認知拡大のため」と理解し広告費を割く
- CPOが合う場合はひたすらROI・ROASを監視しながら広告戦略で伸ばしていく
と言うのがソラノデザイン流の考え方です。
今回のコラムでは自社事業を例に記載していくので、
あくまで「業界的にCPOが合わない」前提で、話を進めていきます。
まずROIが正しく捉えられていないケースが多い
まずはROIですが、正しく捉えられていないケースが多いです。
メタ広告を切ったら、自然流入でのCVも減った、など、
マーケティングに携わる方は聞いたことがある現象ではないでしょうか?
私も最近携わっているプロジェクト2件でそういったお話が出まして、
やっぱり複合的な要素、イメージ広告的な効果って意図せずとも広告にはあるんだなと実感しています。
この例で何が言いたいかと言いますと、
正しいROIがほとんどの場合計測できていないと言うことです。
というかできないのかもですね。
先ほど記載したイメージ広告としての効果、
なども含めますと、
寸分狂わずROIを計算するのは、クッキー規制など法律が変わった今厳しいので、
基本的に定点観測で推定ROIを算出する方法をソラノデザインでは採用しています(いました)。
自社のデータを例に出します。
ある期間(A期間、B期間)での広告と利益の推移です。
売上 | 広告費 | ROI | 広告費を販管費から抜いた利益 |
---|---|---|---|
¥1,898,382 | ¥218,233 | 236.34% | ¥515,744 |
¥2,069,101 | ¥422,776 | 132.97% | ¥562,157 |
これを見ると、ROIに大きく開きがあることがわかります。
同じ商材、似たような期間なのになぜでしょう?
広告費を2倍にすると、ROIが半分くらいになっていますよね。
これは当たり前なのですが、
自然流入でのCVを換算していないからなんですね。
余談ですがこの辺を計算していないちょっと悪質な広告担当者さんなども世の中にはいますので、
エンドクライアントのみなさまには注意してほしいです。
自然流入でのCVを換算から外すため、
差分を計算します。
売上差分
2,069,101 – 1,898,382 = 170,719
利益差分
562,157 – 515,744 = 46,413
広告費差分
422,776 – 218,233 = 204,543
利益差分 / 広告費差分 = ROI
46,413 ÷ 204,543 = 0.226 = 約22%
どうでしょう?
こうしてみると100%以上に見えたROIが、
実は22%の可能性がでてきてしまいます。
しかし落ち込むことはありません。
この商材は7がけ、粗利率27%で仕入れた商材だと言う事もあり、
この例は極端な例です。
また、実はこの計算では「広告以外で得たCV・利益」に換算している数値も、
これまでの中長期にわたる広告費の積み上げで、
認知をとってきたからこそのCV数、利益かもしれません。
(つまり指名検索数がこれまでの広告効果で増えていた)
認知から購買までのかなりラグがある商材・市場な可能性などもあります。
ちなみに3点以上の定点観測で一定のパーセンテージを出そうとすると、
学生時代、数学をちゃんとやってこなかった私は頭がショートします。
最近便利なものが出てきました。ChatCPTです。CSV食わせて回答をもらっています。
話を戻して、このようなROIの例を見ると、みなさん気が付く事がありますよね。
私が冒頭で申し上げた、
そもそもCPOが合わない商材や業界については認知拡大だと割り切って広告を打つことの大切さが。
全体の粗利に対して広告費を換算したROIを出すと、
この例ですと今後広告費を50万、60万と上げていくたびに、
ROIが悪化するでしょう。
ROIが悪くなると焦り、ついつい下記のような勘違いをしてしまいます。
- 市場は広いはずなのに、ROIが悪い。。。
- 広告のクリエイティブが悪いのかな。。。
- メタ広告のクリエイティブを改善しよう!
ただそもそもここにリソースを割きすぎてしまうのが、
プロダクトの立ち上げ時によくある間違いだと、ソラノデザインは考えます。
下記のように考えてみるのはどうでしょうか。
「いや、そもそも広告で戦えない、
少なくとも目先のCVだけだとCPOが合わない商材・業界って事実を受け入れるってことからスタートしよう。
改善の余地は確かにあるが、広告が悪いってことではない。
中長期で毎月60万の広告費を打った場合はどうでしょう?認知につながる?
これはやってみないと測定できない。
まあ調整はできるかもだし、ウルトラC的なプラットフォームや時代の流れがあるかもしれないし、
一概には言えない。
しかし大抵の場合、論点はそこじゃない。
広告はある程度最適化が進んだら、あとはどこで切るか、
どこで出稿するかなどPDCAを少しずつ回しつつ、限りあるリソースは他に割くべき。
そもそもCPOを合わせられる、CPAを合わせられるって概念が間違っている。
ある程度認知が取れゼロイチの見込みが立ったプロダクトなのであれば、
重要視すべきKPIは”ROI”や”CPO”ではない。
それらも重要だが、最重要のKPIは”指名検索数”だと。」
ちなみに私はですが、YouTubeで見たラクスルさんのマーケティングの動画が気が付くきっかけになりました。
いい時代ですよね。あんな有料級情報が無料で見れるんですから。
CPAは節約のKPIであって、本質的な事業の成功のKPIじゃないよねと感じたのはその動画がきっかけです。
toCは指名検索数をKPIにしよう
ということで、最終この結論に至りました。
CPOが合わない市場で、プロダクトの成功におけるKPIは、指名検索数をKPIにするべき。と。
少なくともCPOが合わない商材に関しては、
広告戦略で新規新規と刈り取っていくのは限界がありますし、
たとえ今CPOが合っていても、市場に競合参入があればCPCが高騰しリスクが大きい商売はしたくない。
つまり市場的にどうしても広告のROIが合わない市場。
どうやって指名検索数を増やすかどうか、
広告はそのために使う、
そういった考え方のもと、マーケティング戦略や広告戦略を設計していく必要があります。
これは、よく責任逃れ系の会社が使うような「CPA無視」「ブランド力が上がった」などの言い訳ではなく、
しっかりと数値で達成・未達が計測できる「指名検索数」といったKPIを立てた上での戦略です。
そうなってくると、広告で獲得する注文の意味は、
「顧客に実際にサービスを利用してもらい、なおかつ満足してもらい、ブランド名を良い印象で覚えてもらう。」
「UGCを増やす」
などの意味となってきます。
なので単純に「ROI意識するのやめたから広告をストップしようか」とはなりません。
KPIを指名検索数とし、その下層KPIを設定した上で、その目標数値を達成のための広告を回す必要があります。
弊社のプロダクトの場合、ホーム率を上げるためにリタゲ広告を出稿したのですが、かなり良い施策でした。
そして、KPIを指名検索数としたことで、例えばLTVを追う場合、
①CPO改善のためにLTVを上げる、そのためにサービスを整える
ことと
②指名検索数向上の指標として顧客満足度があり それを図る指標にLTVがある
という事は、似ているようで違います。
具体的な打ち手や広告の撤退ラインなどに大きく影響しますので、
この違いを認識するのはとても大切です。
「何をKPIとして事業を行なっていくかが大切」だとわかりますし、
「チーム全体で何をKPIとしているか認識を共有して仕事する」大切さもこの例でわかりますね。
私などは特に立場上これでも社長なので、
部下に「このKPIを追いかけてくれ」という発言をする時が、
一番責任が重たく慎重になります。
(その他の発言や態度は信じられないくらい適当ですが←)
「そもそもスタートから間違ってた系」のミスは一番後悔しますし部下の努力を無駄するので、
KPI策定とKPI指示は流石に慎重になりますね。
(その他の発言や態度は信じられないくらい適当です)
話を具体に戻します。
例えば自社事業で最初私は、フォロワー獲得単価、つまりCPFを指標に広告を回していましたが、
指名検索数への寄与という意味ですと、間違っていたかもしれないとこの頃感じています。
興味の薄いがミーハーなマス的な層はCPFが安くても、
その後ロイヤルカスタマーになる確率が低ければ、
CPFが少し高くても指名検索が増える層 = ロイヤルカスタマーへの転換率が高い層は他にいたかもしれないと考えています。
クリエイティブに関してもそうです。
例えば大●洋さんのアカウントをフォローしているユーザーと、
実際に大●洋さんのファンクラブにお金を払うユーザーの違いのようなものですね。
「フォローしていても指名検索したりお金を払ったりしない」ユーザーは多く、
指名検索をKPIにするのであれば、
本質的には「必ず指名検索したりお金を使う層」のリーチを100%取るのが理想です。
となると基本的に広告はメタ広告のデモグラ配信を中心にしつつ戦略を設計していくのは継続でも、ターゲティングは変わってきます。
(あくまで弊社のtoC事業の場合)
別の媒体ですが、最近私の周りで「新しくGoogleが出したデマンドジェネレーション広告の効果良かったよ」という声も聞きまして、
これはまだソラノデザインでは知見が浅いですが同じような効果が得られるかもと考えています。
また広告費についての考え方も変わりました。
いずれにしても広告費を上げれば上げるほどCPOが上がりROIが合わない市場である事は間違いない。
とするならば。
- 1円あたりのセッション数を計算
- どの広告費が一番営利が最大化するか
をまず考えました。
そうすると、当社のビジネスモデルの場合は発送や梱包アウトソース費用等がかかるので
- 広告費60万で売が260万 営利14万
- 広告費15万で売が135万 営利27万
- 広告費2万円で売が110万 営利14万
のような数値になることがわかりました。
面白いですよね。
これは自然検索と広告の複合で売り上げが立っていること、
その事を基に定点観測し広告の効果を正確に算出した事で得られた情報です。
つまり財務体制が厳しい時期は、
広告費15万円、売上135万円を短期のKPIにすれば良いということが判明したのです。
売上も、広告費も、上がれば上がるほど良いというわけではなかったんです。
例えば今プロジェクトとして他にリソースを割きたいなというときは、
売上135万広告費15万が最適解。
愚直に指名検索数KPIを追う場合、利益が0でもキャッシュが回るのであれば、
広告費を80万などに設定し、
注文件数を最大化、より多くの顧客にプロダクトのサービスを体感してもらうなど、
ROIやCPOを正しく把握する事で、
財務状況に合わせた意思決定できるということですね。
ブランドコンセプト・コアバリュー・インサイト
そして、こういったKPI指名検索数 = 顧客満足度を追う場合、
大切になってくるのがブランドコンセプト・コアバリュー・インサイトです。
ここに関するインプットはこの半年死ぬ気でやっていました。
幸運にも同じ課題を持つ方々と元旦から合宿したりもしました←
アルコールなしで真剣に議論するお正月、、、シュールでしたね。笑
現在執筆中…..