公開日:2025.10.17 更新日:2025.10.18
目次
昔はブランディングよりハックが好きでした

いつもご覧いただきありがとうございます。
ソラノデザイン合同会社、代表の角田です。
突然ですが、
私は昔、定量化しづらい『ブランド作り』という戦い方が苦手でした。
当時からソラノデザインは、
SEOやSNSマーケ、MEO、
プログラミングやデザイン、
商談のトークスクリプトなど、
『媒体や技術をハックする』のが昔から得意でした。
そのため、弊社が別途行っていますtoC事業も、最初はハック系で作るつもりでした。
ファン化・ブランド化などさせず、
SEOやSNSで短期的にリードを刈り取り、
ROASだけを担保し、
コツコツとショットでマネタイズしていく。
私の得意な戦い方です。
しかしこのtoC事業の立ち上げ時期、
当時「ドメイン・エキスパート」という価値観に感化された事や、
本業であるWeb制作の仕事に私の時間の大部分が取られてしまうこともあり。
私はキャッシュエンジンになり、
『toC事業の立ち上げを、toC事業専属の部下に任せてみよう。』
と思い立ちました。
兎にも角にも、部下に事業づくりを手伝ってもらう。
業務委託ではなく正社員組織で「事業立ち上げ」を行なったのは、
良い面も、悪い面もありました。
簡単なようで、事業作りというのは、
かなりのエネルギーとモチベーションが必要な仕事です。
当時、まず考えたのは、
『本人たちが立ち上げたいと心から思える事業』でなければ、事業が立ち上がらない、
という事でした。
そのため部下にほとんどの意思決定を任せ、
褒める、任せる、
倒産につながる「動き」や「価値観」だけ怒る・叱る、
裏でこっそり広告費を多めにかける、KPIやPL、マーケ施策は経営で見る。
といったマネジメントを徹底した結果、
当時部下たちは、ある程度モチベーションを持った状態で、
toC事業の立ち上げに注力してくれました。
そして、私ではない人間が弊社の事業を立ち上げた結果、
私だと絶対にやらなかった方法で、事業を進めてくれました。
『ブランド』を作るという方法です。
結果、いつもの起業家界隈(ゼロイチ好きの先輩たち)と、
この事業を伸ばし再建することになったのですが、
私は最初のきっかけ・経緯がないと、
『ブランド』というものに、
深く向き合うことはない人生だったと思います。
私なら必ず、『媒体ハック』または『技術ハック』でマネタイズする事業を考えますし、
中長期でファンを増やす『ブランド』というものを作るのは、
正直、難易度が高い、打率は低いゲームだと感じていましたし、今もそう感じてます。
『小銭を儲ける』という意味では、
プレーヤーが誰であれ、ハックの方が小銭は儲かりますね。
しかし怪我の功名で私は『ブランド』を作ることとなり、
今となっては借入を行い事業を伸ばそうとするほど、
ブランドに身を捧げる人生を送ることになりました。
本日はそんな私が真剣に考える、「ブランディング」に関するコラムです。
ブランディングの終着点とは、どのチャネルにも依存せずリピートをとれている状態。

経営者が身を入れないと事業も会社も無くなると気が付いた2024年以降。
私も本気でブランド作りに向き合いはじめました。
Instagram、Meta広告、マーチャントセンター、PPC広告、Pinterest広告、
広告周りは本当に色々とやりましたし、
何より、自社ブランドの理解にかなりの工数を割きました。
Webの事業を終えた後、
毎日InstagramやGoogleのデータチェック、
お客様のコメントやDM等の定性データのチェックと振り返りノート、
同時進行で体調管理と経営業務と。
プライベートなど例年に増して、殆どありません。
借入が誰かの赤字で消えないように、
借入をしてでもブランドを生き残らせると決めた後、
徹底してWEB制作でも赤字を許さない本気の文化作り。組成。
そこからの借入、ブランドを成り立たせるための、店舗事業。
そこまで本気でやってみて思ったことなのですが、
『媒体に依存した認知・リピート』という、
私が得意とするハック系の戦い方は、
『ブランディング』という概念と相反するということです。
どういう事か説明します。
『媒体に依存した認知・リピート』という、私が得意とするハック系の戦い方は、『ブランディング』という概念と相反する。
例えば、Instagramの運用方法を人より上手く行い、フォロワーやいいねが増えた。
SEOや口コミサイトのコントロールを人より上手く行い、毎月何千人、何万人もサイトに流入している。
それらのスキルは、
ブランドの立ち上げ初期にはもちろん必要な小手先のスキルだったりしますが、
『Instagramが無くなったら、誰も買わなくなるブランド』に、
本質的な価値があるかというと、
そのブランドには価値がないと、
この一年、ブランドに向き合い結論づけました。
それはブランドのふりをした、ハック系のビジネスです。
ハックをやるなら、受託でいい。
せっかくブランドを立ち上げたのだから、
ブランドの戦い方をしなくては。
そう感じ、よりブランディングという言葉を深掘りしていきました。
楽器でも、車でも、家具でも、電化製品でも。
誰でもお気に入りのブランドというのが、一つくらいはあると思います。
その『あなたのお気に入りのブランド』は、
例えばInstagramからアカウントがBANされたり、
Googleの検索順位が下がったりすると、
売上は無くなるでしょうか??
私は、『ブランディングに成功したブランド』は、
どの媒体がどうなっても、
(多少の変化はあれど)売上やファンの数は減らないと思うんですね。
この『媒体に依存せず、お客様の心の中にブランドが想起される状態。』を
『ブランディングの成功、ブランドづくりの成功』だと、
私の中で定義づけました。
水分が足りてない時に、「ポカリスエット」というブランドが頭に浮かぶ。
キッチンペーパーが切れた時に「クスリのアオキ」というブランドが頭に浮かぶ。
この状態こそが、「ブランド作りの成功」だと。
もちろん完全な媒体依存脱却は難しいと思いますので、
あくまで「目指すべき方向性」「考え方」としてです。
こういうのは諸説あるので、あくまで私はですが、
ブランディングをそう定義づけることがブランドの成長につながると感じています。
媒体に依存せず、お客様の心の中にブランドが想起される状態。

『媒体に依存せず、お客様の心の中にブランドが想起される状態。』
この状態を作ると決めたはいいものの、
じゃあ具体的に何をするのか。
ブランドコンセプトを決めて、それを貫く、
などの概念論は当然行うとして、
『日々のタスク』に落とし込むためには、KPIから見直さなければいけません。
戦略と戦術という言葉を使うなら、このコラムで考えるべきは戦術の部分です。
まずは言語化です。
例えば私は、フェンダーという楽器のブランドを、媒体に依存せずよく思い出したり考えたりします。
なぜそのブランドを思い出すのか。
それは『そのブランドが好き』だからです。
では『どうやってそのブランドを好きになったか』思い出しました。
まだ小さい頃でしたが、音楽一家で育った私の憧れのギタリスト。
Jimi HendrixやEddie Hazel、John Fruscianteが、
フェンダーのギターの使い手だったからでした。
もちろん大人になった今は、いろいろ弾き比べたり知識を得て、よりフェンダーが好きになりましたが、
きっかけは『ほんの些細な憧れ』でした。
些細な憧れからなんとなく好きになり、
あとから知識を使って、あの手この手で好きな理由を後付けしていく。
私もそうですが、
人間理屈で動いてるように見えて、
本質は意外と、そんなものです。
『人は感情で買い 論理で正当化する』
マーケティングの常套句であり、本質ですね。
『憧れの◎◎さんが使ってるから、私も使ってみたい。』
『流行の◎◎を、私も使ってみたい。』
まずはブランディングの初手として、
この状態を作り上げようと考えました。
つまり「ほんの些細な憧れ」の数を増やすんです。
大手の会社は数千万〜数億使い、
誰もが憧れる芸能人を使いテレビCMを…
などといった手法を取れますが、
我々は零細企業。
とてもじゃないですが、そんな予算も貯金もありません。
SNS黎明期の波に乗った、才能豊かなYouTuberさんは自分の力で行けるのかもですが、
そんなインフルエンス力も私にはありません。
そこで『インフルエンサーさんにPRを依頼する』、
いわゆるインフルエンサーマーケティングに、力を入れていこうと考えました。
それがちょうど1年前ほどだった気がします。
1ヶ月ほど私自ら全てのインフルエンサーさんのDMや日々の投稿に目を通し、
現場理解を深めつつ、インフルエンサーマーケティングを進めていて、
気が付いたことがあります。
『本当にうちのブランドが好きな人にPRをお願いしないと、愛情の薄さがエンドカスタマーにも伝わり、“憧れ”は生まれない。』と。
ここは私らしい気づきといいますか、
ちょっと周りに自慢してる、良い意思決定でした。
本当にうちのブランドが”好き”なインフルエンサーさんにPRをお願いしないと、
『憧れの◎◎さんが使ってるから、私も使ってみたい。』
は生まれない。
そして、私たちが、本気でそのインフルエンサーさんを大切に思わないと、
愛情を持てないと、感謝しないと、
インフルエンサーさんも『うちのブランドを好きにはならない』。
そう考えました。
すると自然と、下層KPIは、
いや、定性指標なのでもはやKPIとは呼べないのですが、
『うちのブランドを好きでいてくれるインフルエンサーさんに様々なサポートを依頼し、その方々にちゃんと感謝し、その方々を大切にする。』
ことが、ブランディングの一歩目になると考えました。
『こういう商品を仕入れたら、あのインフルエンサーさんは喜んでくれるだろうか。』
という議題も会議に取り入れ、
今では商品選定から、この基準を導入しています。
アーリーアダプタを協力してくださるインフルエンサーさんにする、
という意思決定は、少しマーケティングの理論上では抵抗も感じましたが、
この意思決定に賭けてみることにしました。
憧れとUGC
もう一つ別軸で、私は追いかけている指標がありました。
ベタな指標ですが、UGCの数です。
ブランドが、流行る前と、流行る後。
ビジネスマンになりたての頃。
イノベーター理論やJカーブを学び、
わかっていた気になるこの「流行の境目」。
その境目を、改めて、フラットに思考しました。
例えば、無印さんやユニクロさん。マリメッコさん。
今では有名なブランドですし、流行った後のブランドを、私たちは知っています。
また、創業エピソードなどで、立ち上げ期の状況も知ることができます。
しかし、流行る前、無名だった頃と、
流行した時の境目はどうなっていたのでしょう?
ある年に爆発的に成長して、今の店舗数になった?
いや、『キャッシュフロー』を考えると、
あの店舗の大きさ、どれだけ速くても数年以上かかって、
『流行ってない』状態から『流行ってる』状態になったはずです。
(フランチャイズなど外部資本ありきでスケールする場合は別ですが
つまり『流行ってる』状態の一歩手前は、
どのブランドも、
- 『流行ってるかもしれない状態』
- 『流行ってる感がある状態』
- 『一定のファンの間で流行っている状態』
があったはずです。
イノベーター理論との理屈も合いますし、
私たちもブランドを伸ばす際、
- 『流行ってる感がある状態』
- 『一定のファンの間で流行っている状態』
を作る必要があります。
これを実現するためにどうするか。
前項で書いた『ブランドを好きになってもらう』が、
本質的な解なのですが、
『好きになってもらえても、その事を拡散してもらえなければ、流行ってる感、はでない。』
と考えました。
つまり一番大切な目標は
『好きになってもらうこと』
そして次点で
『好きになってもらったアイテムやブランドを誰かに伝えてもらうこと』
が大切ということです。
ここでKPIとなるのが、
『UGCの数』だと考えました。
しかしこれはあくまで、どんなUGCでも良いというわけではなく、
「既にブランドが好きな人のUGC」であることが重要でした。
『ユーザー同士の拡散』による『流行ってる感』の醸成というのが、
本質的な狙いです。
UGCを促進するキャンペーンを行ったり、
日々のUGCに感謝する投稿をブランドの公式アカウントで必ず行うなど、
日々積み上げではありますが、
ファンの皆様にとって『UGCのハードルが下がり』『UGC投稿を行う意欲が上がる』工夫を行っています。
「世の中にどれだけの数、自社ブランドに触れた投稿があるか。」をKPIにしてるんですね。
自社の投稿数やエンゲージメント率より、
オーガニックで発生したUGC数や指名検索数をKPIにする。
本質的なブランディング戦略だと考えました。
「オーガニックで」というのがポイントです。
“憧れ”や”好き”を作ると同時に、”信頼”を作るために。
直近で行った意思決定で、
大型ショッピングモール(オフライン)と、
大型ECモール(オンライン)への出店という意思決定がありました。
オフライン・オンライン、両軸で大手の方々のお膝元で、商売をする意思決定です。
最初は正直、自社サイトや自社媒体でマネタイズする事に、
こだわりを持っていたのですが。
成功しているブランドを見ていると、
- 今はモールに出店していなくても、過去には出店していた。
- モールのことを悪く言う人たちも、一度はモールに出店している。
ことに気がつきました。
これは、本人達の自覚の有無はともかく、
- 『一度、出店したことによる認知拡大。』
- 『一度、出店したことによる信頼の底上げ。』
が起こったのではと考えました。
つまり、前々項で書いた”憧れ”や”好き”を作ると同時に、
”信頼”を作るのもブランディングだと考えたんです。
そして、前項で書いた、
「流行る前、無名だった頃と、流行した時の境目」
に、大型モールの存在があるのではと仮説を立てました。
”信頼”を作る。
信頼をどう言語化するかはケースバイケースですが、
ここではわかりやすく、「信頼 = 警戒していない状態」と定義します。
もちろん、これは「信頼」の一部に過ぎませんが。
皆さんも、よくわからない警戒心を持たれて、
何をやっても良い捉え方をされない、そんな経験や、
なかなか警戒を解いてもらえず、仲良くなるまで時間がかかった、
そんな経験があるのではないでしょうか?
基本的に、ファンとの関係やエンドユーザーとの関係でも、
まずは「警戒を解いてもらう」ことは関係値作りの第一歩です。
そして警戒心というのは本当に十人十色で、
私などはブランドや人を信頼しやすいタイプなのですが、
人によっては信頼するまで、中長期的な時間や、大手の保証が必要な場合もあります。
実際に当社もユーザーインタビューの上で、
『知らないサイトで、クレジットカードを切るのが怖い。』といったお声をいただきました。
すでに6万フォロワーを超えていてもです。
これだけのフォロワー数になっても、そこの信頼の壁を越えられない事があるのだなあと、
「信頼作り」については、多少事業のフェーズが上がっても疎かにしてはいけないと痛感しました。
引き続きブランディングを学んでいく姿勢
以上が、ここ1年で考えていたブランディングの”大枠”でした。
まだまだ学んでいきたいですね。
また新たな知見を深めて、ブランディングに関するコラムを書いていきたいと思います。
今後ともソラノデザイン合同会社を、
どうぞ宜しくお願い申し上げます。