公開日:2026.02.03 更新日:2026.02.03
お久しぶりです。ソラノデザイン合同会社の代表、角田です。
普段はWeb制作会社として、企業様サイトの設計・制作・運用、集客導線の改善、コンテンツ設計などを仕事にしています。
一方で、机上の理屈だけで語るのが苦手で、このごろは自分でも雑貨の店舗ビジネスを運営しています。
場所はイオンモールかほくさんです。
つまり私は、
- 「集客を設計する側」(Web制作・マーケティング)
- 「集客に振り回される側」(店舗運営)
この両方を、同時にやっています。
だからこそ、今回のテーマである「指名顧客の大切さ」について、かなり生々しい気づきがありました。
目次
売上が立ったのに、なぜか嬉しさが薄い日がある

店舗をやっていると、たまに不思議な感覚になります。
数字だけ見れば、売上は悪くない。
なのに、なぜか心が落ち着かない日がある。
その正体が、最近はっきりしました。
「ついで」に拾えた売上が多い日は、ブランドが積み上がっていない感覚になるんです。
例えば、イオンさんのような商業施設だと、こういう動きが起きます。
- 「イオン来たし、ついでに何か見よ」
- 「近くにあったから入ってみた」
- 「時間あるし、ふらっと」
もちろん、これも売上になります。
ありがたい。
ただ、冷静に考えると、ここで勝っても本質的なブランド価値に直結していないことが多いんです。
一方で、強いのはこういう人たちです。
- 「あのお店に行こう」
- 「あれを買うなら、あそこ」
- 「あのブランドなら、間違いない」
この「指名」が生まれている状態は、売上以上の価値があります。
なぜなら、指名は「偶然」ではなく「記憶」だからです。
指名顧客とは、結局「想起」に勝っている顧客

マーケティングで重要なのは、突き詰めると想起です。
人は、買う前に思い出します。
比較する前に、頭に浮かびます。
その時点で勝負の半分が終わっている。
指名が生まれる状態を、私はこう定義します。
「課題が発生した瞬間、比較検討より先に、そのブランドが頭に浮かぶ状態」
逆に、ついで客が多い状態はこうです。
「課題ではなく、暇つぶしや導線で来ている状態」
売上は立つけど、頭の中のポジションは取れていない。
だから、次回の来店理由になりにくい。
ついで客が悪いわけではない
誤解がないように言うと、ついで客が悪いわけではありません。
ついで客は、入口としては最高です。
問題は、ついで客を「ついでのまま」にしてしまうこと。
つまり、指名に変換できていないこと。
「指名が増える」と何が強いのか
指名顧客が増えると、経営に起きる変化はけっこう露骨です。
- 価格競争から距離が取れる(最安比較の土俵に乗りにくい)
- 広告依存が下がる(刈り取りの比率が下がる)
- リピートが増える(購入の意思決定コストが下がる)
- 紹介が発生する(信頼が移転する)
- 採用にも効く(「あの会社」で働きたいが起きる)
そして何より、指名が増えると、事業がチャネルに依存しにくくなる。
SNSが落ちても、検索順位が揺れても、施設の来館が落ちても、ゼロにはなりづらい。
これは、運が良いからではなく、頭の中に居座っているからです。
指名とついでを、マーケ指標として分解する
感覚論で終わらせると、だいたい何も改善できません。
なので、ちゃんと分解します。
| 区分 | 来店の理由 | 購買の意思決定 | 積み上がる価値 | 弱点 |
|---|---|---|---|---|
| 指名顧客 | 「ここに行く」 | 比較の前に決まっている | ブランド・信頼・紹介 | 体験がブレると一気に離れる |
| ついで客 | 「たまたま」「暇」 | その場の衝動が中心 | 売上は立つが記憶が薄い | 次回に繋がりにくい |
ここで重要なのは、ついで客を増やすことより、ついで客を指名顧客に変える設計のほうが、長期的なROIが高いことが多い、という点です。
理由は単純で、指名は「二回目以降」が強いからです。
マーケティングへの応用:指名を作るのは「思い出させる技術」ではなく「思い出される理由」
ここが今日一番言いたいことかもしれません。
指名を増やす、というと、すぐにテクニックの話になりがちです。
- 広告を回す
- SNSを伸ばす
- キャンペーンを打つ
- LINE登録を増やす
もちろん必要です。
でも、これらは「思い出させる技術」です。
本質は、「思い出される理由」を作れているか、なんです。
指名が生まれる理由は、だいたい4つに集約できる
- 専門性:それならあそこ、という認識
- 審美性:あの世界観が好き、という感情
- 信頼性:外したくない時に選ばれる
- 関係性:あの人から買いたい、という人間性
この4つのどれかが尖っていると、指名が発生しやすい。
逆に、全部が平均点だと、ついでで買われて終わりやすい。
ここでよくある勘違いが、
「全部を高水準にしないと指名されない」
という発想です。
違います。
尖りがあるほうが指名されます。
平均点は、比較検討の棚に置かれるだけです。
指名を増やすための設計図
ここから実務の話に落とします。
「指名顧客を増やしたい」と言うだけなら簡単です。
増やすためには、順番があります。
1. 指名の入口を3つに決める
指名の入口は、だいたい次の3つです。
- 検索(店名・サービス名・人物名で探される)
- 紹介(信頼が移転してくる)
- 再来店(体験が記憶に残っている)
店舗なら、ここにもう1つ加わります。
- 目的来店(「あれを買いに行く」)
このどれを伸ばすのか。
全部やると、だいたい全部薄くなります。
なので、まずは「今いちばん伸ばす入口」を決める。
2. 指名が生まれる「一言」を作る
指名は、説明が長いと発生しません。
これは周りを見ていて、頭の良い人たちほど陥りがちなミスだと思います。
人の頭は忙しく、想像以上にシングルタスクです。
だから、指名が生まれるブランドには、だいたい一言のタグがあります。
- 「贈り物ならここ」
- 「失敗したくないならここ」
- 「このテイストが好きならここ」
- 「このジャンルに強いのはここ」
この一言が作れないブランドは、指名されにくい。
なぜなら、思い出すフックがないから。
3. 体験を「一致」させる
指名は、世界観と体験が一致しているほど強くなります。
ここで言う一致は、デザインの話だけじゃないです。
- 接客の言葉
- 説明の仕方
- 商品の選び方
- 値付けの癖
- ラッピングの丁寧さ
- POPの文体
- レジ周りの所作
全部ひっくるめて「一致」です。
指名顧客は、ここがズレた瞬間に離れます。
理由は簡単で、指名は「期待」だからです。
期待が外れると、比較検討に戻される。
読了率のための話:指名は「熱量」でできている
ここまで、結構ロジックっぽい話をしました。
でも、指名って、最後は感情です。
「なんか好き」
この一文に勝てないことがある。
だから私は、指名顧客を増やす施策を考える時、最後に必ずこの質問をします。
「この施策は、お客様の好きの理由を増やしているか?」
例えば、ついで客が多い日にやりがちな改善って、こうなりやすい。
- 入口に安い商品を積む
- セールで回転を上げる
- ついで買い導線を強化する
短期売上には効くことが多いです。
ただ、これをやりすぎると、ブランドはこうなります。
「安いから買う店」
これは指名のようで指名ではない。
値札に指名されているだけです。
「好き」に寄与する施策は、派手じゃない
好きの理由を増やす施策は、地味です。
- 商品の説明が一貫している
- 選び方に哲学がある
- 店員の言葉に温度がある
- どの商品にも「らしさ」がある
- 買った後も気持ちが良い
こういうやつです。
派手じゃないけど、強い。
これが積み上がると、「イオン来たついで」が、
「イオン行くなら、あのお店にも寄ろう」
に変わります。
この一段階目の指名が生まれた時点で、かなり勝ちです。
最後に:指名顧客は、事業の「保険」であり「資産」
景気が悪くなったり、競合が増えたり、広告費が高騰したり。
外部環境って、基本こちらに優しくないです。
その中で、唯一コントロールできるのが、指名の比率です。
指名顧客が増えると、売上が上がるだけじゃありません。
精神的にも安定します。
なぜなら、明日SNSが死んでも、今日積み上げた指名は、すぐには消えないから。
ついで客で売上を作るのは、悪じゃない。
でも、ついで客だけで回すのは、長期的に不安定になりやすい。
だから、私はこう考えるようになりました。
「ついでで拾う売上」と「指名で積み上がる価値」は別物。
両方必要だが、後者がなければ、前者はいつか崩れる。
もし今、あなたの事業が「集客の施策は増えたのに、なぜか不安が消えない」状態なら、
それはもしかすると、指名の比率がまだ薄いのかもしれません。
指名は、派手なハックより、地味な一致で育ちます。
そして、その地味さが、最後に一番強い。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。