公開日:2025.05.22 更新日:2025.05.23
いつもありがとうございます。ソラノデザイン合同会社、代表の角田です。
ここ数年、ChatGPTやMidjourney、GitHub Copilot といったジェネレーティブAIが劇的な進化を遂げ、WEB制作の現場にも大きな変化が訪れています。
はじめは「デザインのアイデア出し」「コーディングの雛形生成」といったアシスト機能にとどまっていたAIですが、
今やワイヤーフレームの自動生成からHTML/CSSの実装、さらにはJavaScriptでのインタラクション実装まで、非常に高いクオリティでこなせるようになりました。
この流れがさらに加速すれば、いよいよ、10年後には“人間のWEB制作会社”というビジネスモデル自体が成り立たなくなる可能性が、極めて現実味を帯びてきました。
目次
AIによる効率化がもたらす「価格競争」の波
AIがコーディングやデザインを高速化するということは、言い換えれば「同じ工数でより多くの案件をこなせる」「同じ納期でより低価格を提示できる」ということを意味します。
今はバブルですが、将来はかなり危ういです。
たとえば、従来であれば1案件50万円〜150万前後が相場だった中規模サイト制作も、
AIツールを活用すれば30万円、あるいは20万円以下で受注するプレイヤーが増えてくるでしょう。
価格が下がると、発注側はより安いサービスを求め、
結果として市場全体での単価ダウン競争が激化します。
制作会社としては利益率を維持するために、以下のような“悪循環”に陥る恐れがあります。
- 単価が下がる ↓
- 同じ売上を維持するには受注件数を増やす必要がある ↓
- 営業人材を増やしながら一人当たりの生産性をさらに上げなければならない ↓
- しかし簡単には案件数は増えず、また、世の中の案件数に対して制作者が多すぎるため、代理店にも頼りきれず、結局利益が圧迫される。
ランニングコストを稼ぐために必要な“受注件数”の試算
弊社ソラノデザイン合同会社の現状を例に試算してみましょう。
- 月間の固定費(オフィス家賃+諸経費+人件費の一部換算):約200万円
- 従来の平均制作単価:70万円/案件
- AI活用後の想定平均制作単価:25万円/案件
【従来】
固定費200万円÷単価70万円=最低3件で黒字ラインクリア
【AI後】
固定費200万円÷単価25万円=最低8件で黒字ラインクリア
単価が半分になると、黒字ラインを維持するための受注件数は倍になります。
さらに、利益を出そうとすれば10件~ほど必要となり、従来の3倍〜の営業リソースと生産リソースを確保しなければなりません。
また、制作スピードが上がると「1ヶ月で仕上げられる案件数の上限」もあるため、今と同じ体制・同じ人数では受けきれない危機的な状況に直面します。
WEB制作ビジネスの先に見える“消滅シナリオ”
10年後、もしAIがさらに進化し、「デザインの質」や「開発の質」が人間と遜色なくなったとき、
WEB制作会社は次のような格差に分かれるでしょう。
- 「AI利活用企業」
- 社内にAIツールを取り込み、生産性を極限まで高める。
- しかしこれは誰でも考えること。さらに、世の中のニーズはホームページ制作ほど多くはないので受注獲得に難あり。
- さらに、薄利多売のビジネスモデルに陥りやすく、質の担保も難しくなる。
- 「ハイエンド特化企業」
- ブランディング、UX設計、マーケティング戦略など、AIでは代替しづらい領域に特化。
- 高単価案件を受注しつつ、コンサルティング寄りのサービスを提供。
- すでに地域No1ほどのデザインレベルを担保している会社のみ、参入と生き残りの再現性がある分野。
- 「消滅・縮小企業」
- AI化の波に乗れず、単なる実装請負に終始。
- 価格競争から脱け出せず、事業継続が困難に。
もしソラノデザインが「消滅・縮小企業」のままAIを他社と同程度にしか活用できなければ、
価格競争の洪水に飲まれて撤退せざるを得ません。
ソラノデザインとしては別事業での「リアル店舗出店」への挑戦
こうした厳しい現実を前に、弊社は単なるWEB制作会社という枠を超え、
新たな収益の柱を立てる必要があると判断しました。
その一手が、現在通販として事業を行っているインテリア小売り事業の実店舗の出店です。
とりあえずロードマップとしては、この半年以内に竪町と金沢駅近でポップアップストアですね。
なぜ雑貨店なのか?
- 既存EC顧客の拡大:ECサイトで積み重ねてきた顧客層が、そのまま実店舗にも来店しやすい。
- 体験価値の提供:デジタルだけでは伝えきれない“質感”や“手触り”“香り”などをリアルで体感できる。
- ブランディング強化:雑貨店運営を通じて、“暮らしをデザインする企業”としてのプレゼンスを高める。
実店舗出店によるメリット
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収益の安定化:制作業務の売上が一時的に低迷しても、雑貨店舗の売上が下支えする。
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オムニチャネル戦略:ECとリアル店舗を連携させ、購買体験をシームレスに。
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マーケティング基盤の強化:来店データ・購入データを蓄積し、デジタルマーケティングにフィードバック。
これからの10年を生き残るために
WEB制作会社が消滅するかどうかは、AIの進化スピードと、それをどう活用するかにかかっています。
- 単なる「実装代行」から脱却し、戦略設計やブランディング、UX設計など、AIでは代替しづらい「高付加価値領域」へのシフトが必須。
- しかし「高付加価値」を求める顧客の母数は限られているため、この先は戦いになる。
- 激化する価格競争に巻き込まれず、自社ブランドや自社商品を持つことで収益基盤を多様化する。
ソラノデザイン合同会社は、WEB制作事業と並行して、雑貨店「Fresk実店舗」を立ち上げ、デジタルとリアル双方の強みを生かすオムニチャネル戦略を推進していきます。
このコラムで個人的に、2021年ほどからずっと書いてきた「AIによる業界変化」。
いよいよ現実となるタイミングが近づいてきました。
ただこうなる事を予想して、無理もして、厳しい決断も残酷な決断もして、
全力でインテリア事業を作ってきた2年。
結果を出したいなと思います。
なんとか乗り越えられるといいんですけどね。
しかし「時代」には誰も勝てないものです。
有名人を見てて思います、結局どんな才能がある人たちでも、「時代」には勝てない。
「WEB制作」という産業が伸びてく時代だからこそ私も活躍できましたが、
この先は違う時代になりそうです。
実際に、米国ではAI失業が始まったそうです。
無借金経営を続け、最悪の場合いつでも法人として撤退ができる準備を進めつつ、
少しキャッシュ的に心許ない&タイミング的には早まったのですが、
実店舗に挑戦していこうと思います。
今後ともソラノデザイン合同会社を、
どうぞよろしくお願い申しあげます。